誰も見ていない
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夜の都会の駅のコンコースに、一人のおじさんが突っ立って、行き交う人々をじっと見つめている。
おじさんの足元には鞄がある。おじさんは背中をぼりぼりと掻く。そして鞄の中からスケッチブックで作った小さな立て看板を取り出す。
立て看板には「羽化します」と汚い字で書かれている。
おじさんはシャツを脱ぎ、ズボンを脱ぎ、パンツ一丁になる。行き交う人々は誰もおじさんを見ていない。
おじさんは膝を抱えてうずくまる。
「うーん」
おじさんは唸り出す。
おじさんの背中に裂け目が現れる。
「うーーーん」
おじさんの声が高くなる。裂け目が広がっていき、ついに背中全体が裂ける。
そしてその中から、一匹の青い蝶が出てきて、ひらひらと飛び去る。
おじさんの抜け殻と立て看板が残される。誰もその光景を見ていない。
おじさんの足元には鞄がある。おじさんは背中をぼりぼりと掻く。そして鞄の中からスケッチブックで作った小さな立て看板を取り出す。
立て看板には「羽化します」と汚い字で書かれている。
おじさんはシャツを脱ぎ、ズボンを脱ぎ、パンツ一丁になる。行き交う人々は誰もおじさんを見ていない。
おじさんは膝を抱えてうずくまる。
「うーん」
おじさんは唸り出す。
おじさんの背中に裂け目が現れる。
「うーーーん」
おじさんの声が高くなる。裂け目が広がっていき、ついに背中全体が裂ける。
そしてその中から、一匹の青い蝶が出てきて、ひらひらと飛び去る。
おじさんの抜け殻と立て看板が残される。誰もその光景を見ていない。
ホラー
公開:24/11/29 18:40
短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/
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