悪魔の契約

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私には高血圧の持病があるのだが、どうしてもやめられない食べ物がある。それは『ラーメンでびる』の塩ラーメンだ。ほかにはない複雑な海鮮出汁のとりこになっている。しかし先日、とうとう自宅で倒れ、救急病院の世話になってしまったため、最後に一度だけと決めて店を訪ねた。するとどういうわけか客は私一人しかいなかったので、店長と話をする流れになった。店長は実は自分は悪魔なのだとカミングアウトしたうえで私に取引を持ちかけてきた。高血圧を治して一生ここの塩ラーメンを食べさせてやる代わりに死後の魂が欲しいと言うのだ。塩ラーメンは食べたいし死後の世界を信じていないから別に構わんなと思ったが、一応たずねた。
「その話、他の客にもしたんですか?」
「ええ。しかし契約に必要な個人情報を聞き出そうとしたら皆様帰ってしまって」
「今の世の中、個人情報には敏感になっていますからねえ」
私も他の客同様丁重にお断りして店を出た。
ファンタジー
公開:24/12/01 11:14

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。

清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選

ときどき短編〜長編も書いています(別名義もあります)

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