ショートカット

私の父は真面目で、家族想いで、とてもつまらない人だ。
そんな父は２０年以上、同じ車を乗り続けている。新しい車には興味がないようだ。
父の運転はいつも同じ道で、同じ場所に向かうので飽き飽きだ。もっと新しい事はないのかと愚痴ってしまう。
するとある日、父が面白いものを見せてやると言って行きつけの車屋へと連れて行ってくれた。
そこで新しい車の鍵を受け取る父。もしかして新車を買うの？
父は首を横に振る。とんだ期待外れだ。
父は新しい車の鍵を今乗っている古い車にさした。
すると車は勝手に動き出し、自動で走行を始めた。えっ？どうなっているの？
「この鍵はショートカットキーと言って、いつもやっている動作を代わりにやってくれる鍵だ。これで俺に万が一があっても、この車がお前達を自動で目的地に運んでくれる」
そう話す父の頭を軽く叩いた。いくら安全運転でも、私はこの車の運転席に父がいないなんて絶対認めないから。