ショートカット

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「垢抜けるよ」
その言葉を信じて切ってもらったのに、ショートカットは私に似合わなかった。
変われるかも。そう期待してしまった自分を呪いたい。いつもに増して、翌日の学校は憂鬱だった。

クラスの派手な女子グループが、私をチラチラ見てくる。
「きのこじゃん」
リーダーの田所さんが言うと、取り巻きたちは高い声で笑った。
――きのこ、か。
その時、私の中で何かが変わった。

いつも目立たないように潜んでいる薄暗い教室の隅が、不思議と居心地よく感じられる。
思わず身震いしたら、何かが飛んだ気がした。

翌日から、クラスの地味系の女子たちは、続々とショートカットに変わっていった。

きのこが十人に増えた時、焦りを覚えたらしい田所さんが、私に迫ってきた。
「あんたたち、何のつもり?」
「いや、何も」
苛立った彼女の手が、私の頭を叩く。
「キャア、痛い!」
叫んだのは、彼女。
私に触れるな、毒があるぞ。
その他
公開:24/11/25 20:42

藤原チコ

読むのも書くのも好きです。よろしくお願いします!

2022 ショートショート集『節目の一杯』をつむぎ書房より出版
2023 愛媛新聞超ショートショートコンテストにて「かぞくしんぶん」が特別賞に選ばれる
2024 第20回坊っちゃん文学賞にて「鯉のぼり」が佳作に選ばれる

発表し合える環境に感謝します。

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