8
5

「…最近の光はつまんねぇなぁ」

洒落た都会のイルミネーション並木を見上げながら師匠がぼやく。このぼやきが、もはや俺にとっての冬の風物詩だ。

「木が可哀そうで見ちゃいられねぇ!線がぐるぐる巻きでよぉ…」

「まぁ、現代人は忙しいっすから。あぁいうの使わないと」

「それじゃ俺が暇人みてぇじゃねぇかっ!」

やっべ…言葉選びミスった。

「いやっ!俺は、真夏の炎天下に小川で跳ねる夏の日光集めて、手間暇かけて質のいい光の粒まで磨き上げる師匠みてぇな根性のあるやつはいねぇって言いたかったんっす!」

「なんだ、そういうことかよぉ!」

機嫌をよくして、師匠が俺の背中をバシンと叩いた。

「さて、今夜の依頼はこいつだ!」

駅から数分歩き、大きな病院の敷地内で夜に溶けかけている一本の木の前で立ち止まると、師匠が光る竹筒を振りあげる。

途端、葉のまばらな冬の木に眩しい夏の光の粒が無数に咲いた。
ファンタジー
公開:24/11/28 19:07

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

読んでくれてありがとう!

寒い季節になったから、気が向いた時にふらりと立ち寄ってゆるーく投稿しています。

少し早いですが、よいお年を!

 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容