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「ずいぶん伸びましたねぇ」
煌めく漆黒を一房掬い、鏡越しに話しかける。
「そうなの〜。だから今年もお願いね♪」
私にそう伝えると、お客様は早速雑誌を手に取り読み始めた。もうだいぶ長い付き合いになるから、こうして私におまかせしてくれる。嬉しいことだ。
「こんなに艷やかな黒だと、もっと伸ばしたいなって思うことありませんか?」
「それはまぁ…。でも、私がお洒落の為に伸ばし続けたら困る人も多いだろうし、何より毎年こうしてあなたに短くしてもらえるのが楽しみだったりするの♪」
目を落としていた雑誌から顔を上げて、鏡越しに笑顔を向けるお客様に「ありがとうございます」と伝えてから、私は鋭く光る銀色の鋏を手に取り、小気味よい音を奏でながらゆっくりと丁寧に夜を切り始める。
今日は冬至。
長く伸びきった夜を短くしていき、夏至に美しいショートカットを完成させるのが日陽師(びようし)である私の役目だ。
煌めく漆黒を一房掬い、鏡越しに話しかける。
「そうなの〜。だから今年もお願いね♪」
私にそう伝えると、お客様は早速雑誌を手に取り読み始めた。もうだいぶ長い付き合いになるから、こうして私におまかせしてくれる。嬉しいことだ。
「こんなに艷やかな黒だと、もっと伸ばしたいなって思うことありませんか?」
「それはまぁ…。でも、私がお洒落の為に伸ばし続けたら困る人も多いだろうし、何より毎年こうしてあなたに短くしてもらえるのが楽しみだったりするの♪」
目を落としていた雑誌から顔を上げて、鏡越しに笑顔を向けるお客様に「ありがとうございます」と伝えてから、私は鋭く光る銀色の鋏を手に取り、小気味よい音を奏でながらゆっくりと丁寧に夜を切り始める。
今日は冬至。
長く伸びきった夜を短くしていき、夏至に美しいショートカットを完成させるのが日陽師(びようし)である私の役目だ。
ファンタジー
公開:24/11/28 19:05
月の音色
ショートカット
読んでくれてありがとう!
寒い季節になったから、気が向いた時にふらりと立ち寄ってゆるーく投稿しています。
少し早いですが、よいお年を!
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