部長の顔

「本当に申し訳ございません！」
もう何度目になるだろう…部長に頭を下げた。
「気にするな。失敗してナンボだ」
大きな仕事を任され、気が逸っていた。気が付くと会社に損害を与えていた…
そんな僕を部長は厳しく注意するだけで怒りはしなかった。それどころか「全て自分の責任です」と僕に代わって頭を下げた。
この仕事で僕は部長の顔に泥を塗ってしまった…それを部長を敵視するAさんが見逃す筈がない。
部長に散々嫌味を言うAさん。それを真摯に受け止める部長。
その態度に苛立つAさんは「いつかお前の化けの皮を剥いでやるからな！首を洗って待っていろ！」と吐き捨てた。
去っていくＡさんの背中を背中を見つめ、部長が口を開く。
「俺は面の皮が厚いんだ。Aさんが俺の化けの皮を剝ごうものなら、身を削られる前にまず泥のついたこの面の皮を剥いでもらうとしよう」
部長は俺が塗った泥で、首ではなく顔を洗って待っているさと笑った。