我が子

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 午後の電車に乗っていた。車内にはまばらに乗客がいた。
 ある駅で赤ん坊を抱いた若い母親が乗ってきた。
 電車が走り出した。
 しばらくして赤ん坊がぐずり始めた。母親は赤ん坊をあやした。
 しかし赤ん坊はだんだん大きな声で泣き出した。母親は必死にあやしていた。
 乗客の中にスマホを持ったおじさんがいて、そのおじさんが赤ん坊をちらちらと見ていた。
 心の狭い人だ。
 そう思っていると、とうとう赤ん坊がわんわん泣き始めた。
 すると、スマホを見ていた乗客全員が、赤ん坊を困惑した顔で見始めた。
 どうしたのだろうと思い私もスマホを取り出すと、赤ん坊の泣き声に合わせて、電波が入ったり切れたりしていた。
 私は赤ん坊を見た。母親と目が合った。
 母親は無言で頭を下げ、次の駅で慌てて降りていった。その瞬間、スマホの電波が元に戻った。
ホラー
公開:24/11/22 16:15

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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