染まりやすいあいつ

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大学の研究室で親しくなったあいつは、とにかく人の影響を受けやすい奴だった。
僕が好きだった曲は、すぐにあいつのプレイリストに並んだ。

そんなあいつは、新しく研究室に入ってきた後輩の桃子に恋をして、一気に桃色に染まってしまった。
二人の付き合いが深まるにつれ、プレイリストがK-POPに染まるだけでなく、みるみるうちにあいつの髪も肌も桃色に染まった。

雪の降ったある日、そんなあいつが真っ白になって教室の隅に座っていた。
「桃子、他に好きな人が出来たって」

僕はしばらくの間、頭の先から足先まで真っ白になったあいつを励まし続け、春休みに入る頃には元の色を取り戻した。

長い春休みが明け、久しぶりに会ったあいつは全身青黒く染まっていた。

「実は俺、ジーンズにハマったんだ」

そう言ってあいつは、ジーンズの裾をロールアップさせながら、インディゴブルーに染まった歯を見せて、朗らかに笑うのだった。
青春
公開:24/11/21 22:49

ぱせりん( 中四国 )

北海道出身です。

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