女心の秋の空

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「切り過ぎてしまいました」
鈴虫の羽音の様な澄んだ声でつぶやき、秋の姫君が一段と短くなった髪をかき上げます。道理で今年の紅葉が進まないはずだ。私は苦笑して、もみじ散る髪を初霜の袖で撫ぜました。
「ベリーショートもお似合いです。夏の王子に見せていらっしゃい」
「あの方の熱烈さには疲れました。最近ますます長居して、太陽のマントが伸びる一方ですもの」
氷の様な堅物はつまらないとふった元彼に、今彼の愚痴をこぼしますか。女心と秋の空とはよく言ったものです。
「人間界のクールビズを勧めてみては?来年は猛暑が落ち着くかもしれません」
「クールな冬将軍が、近頃温かくおなりだこと。そういえば、春の女王様のドレスも、誰かさんの入れ知恵のせいで、ミニスカートになったとか」
からかい半分に秋波を送る姫君を木枯らしで躱し、私は雪雲の馬に飛び乗ります。
誰かさんのショートカットのせいで、今年の遠征は長くなりそうです。
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公開:24/11/25 14:19
ラジオ『月の音色』 月の文学館 テーマ:ショートカット

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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