安楽死椅子

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 日本で安楽死が合法化された事を受け、我が社で新製品が開発された。
 その名も安楽死椅子。この椅子に座って目を閉じると、心の奥底に眠っている真実の願望が叶った夢を見ながら、幸福の中で文字通り眠るように死に行く事が出来るのだ。
 時代のニーズに応えた画期的な製品であるかに思われたが、残念な事に実用化には至らなかった。
 その理由は、試作品を使用した被験者の最期があまりにも凄惨なものであったためだ。
 安楽死椅子に座った被験者は、初めの内は幸福そのものといった表情を浮かべていた。しかし、時間が経つにつれてその顔は苦痛に歪み、最終的には身の毛のよだつような悲鳴を上げた後、カッと目を見開きこの世のものとは思えない形相で事切れたのである。
 調査の結果、安楽死椅子の機能それ自体に問題は見つからなかった。人間の真実の願望というものは、あの被験者の死に様同様、正視に耐えない悍ましいものなのであろうか。
SF
公開:24/11/18 19:04
更新:24/11/18 19:06

小石( 首都圏 )

純愛ものを書きたいと夢見るお年頃
週一くらいで投稿したいです

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