思い出

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 彼は地元中学の同窓会会場で、川辺香の事を懐かしく思い出していた。
 当時の彼は、地味で根暗でガリ勉な香をいつもいじっていた。今考えると、それは自分だけが気付いている彼女の可憐な美しさを、周囲の男子の目から隠したいが為の愚行だったのかもしれない。
「もしかして、村木君?」
 声の方を見ると、モデルのような美女が立っている。
「お前……まさか、川辺?」
「そうよ。中学を卒業して以来ね、懐かしいな」
 俺に会いに帰ったのか――半ば本気でふざけようとした彼の目は、香の左手の薬指に嵌った指輪に吸い寄せられた。
「ああ、これ? 私、東京の大手企業で働いているんだけど、そこの取引先の人とお付き合いしていて、来月結婚するの」
 香は呆然とした彼の顔をじっと見据え、大輪の花が咲き誇るように美しく微笑んだ。
「さてと、気が済んだし、私はもう行くよ。じゃあね」
 そして彼に背を向け、振り返らずに去って行った。
青春
公開:24/11/20 20:43
更新:24/11/25 23:00

小石( 首都圏 )

純愛ものを書きたいと夢見るお年頃
週一くらいで投稿したいです

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