サンタクロースにスカウトされた犬

私の家にはサンタという犬がいた。真っ白くて、サンタクロースの髭みたく真っ白な毛で覆われた口元が特徴の大きな犬だ。
そのサンタが数年前、認知症になった。どうする事も出来ず、手放すしかないと思っていた時の事だ。
サンタクロースを名乗るお爺さんがサンタが欲しいと言ってきた。サンタの認知症を治せると言ってきた。
お爺さんは約束してくれた。１年に１度、クリスマスの夜にサンタに会わせてくれると。
その年から、私にとってクリスマスはサンタに会える特別な日となった。
認知症が治ったサンタは、速達でプレゼントを渡すサンタクロースのソリを引く一匹に選ばれていた。
トナカイソリより早い犬ソリ。その一匹に選ばれ、サンタは心なしか誇らしげにも見える。
私はサンタとその仲間達にクッキーとミルクを振る舞う。もちろん、サンタクロースのお爺さんにもだ。
私にとってはこの時間が、どんなプレゼントよりも価値のあるものである。