植物人間

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 会社への遅刻を回避するため、公園を突っ切る近道を通っている途中で、僕は思わず足を止めた。
「また植物人間の数が増えている」
 半月前は十体だったのが、今や十三体だ。皆公園の土に根を下ろし、一糸纏わぬ緑色の体を太陽の方に向けたまま微動だにしない。
 インフルエンサーによると、今日本各地で増加している植物人間は、僕らの生命や生活の維持に必要な衣食住のコストゼロ化を実現した、人類の進化の最終形態なのだそうだ。
 彼らは光合成のため、広くて日当たりの良い公園等に根を下ろす事が多い。自治体には近隣住民から苦情が多数寄せられているらしいが、植物人間は無理に引っこ抜くと枯れてしまうため、職員は対応に苦慮しているとの事。
「あ、いけない! 会社に遅刻しそうなんだった!」
 忙しない人としての生にいよいよ我慢ならなくなったら、僕も植物人間になろうかな?
 その日は案外近いかも知れない。
ファンタジー
公開:24/11/19 20:39
更新:24/11/20 20:04

小石( 首都圏 )

純愛ものを書きたいと夢見るお年頃
週一くらいで投稿したいです

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