春はまだ遠く

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日が落ちてからの野路を歩きながら、ほんの少し空気に残されたあたたかさに、昼間の陽気を思いだす。
そういえば今朝はアラームが鳴るまえに目が覚めた。
なにか良いことが起こる予感を覚えた。
「おはよう」と声をかけても、黙って通りすぎるあのひとがちいさな声で返してくれたことや、にらみつけることが習慣になっているあのひとと、いつもよりじょうずに会話ができた1日を振り返る。
「自分軸」ってなんだっけと思った。
あのひとのご機嫌取りに夢中で、私はもう忘れてしまった。
なにかを喪い、その代わりに平穏を得ているのなら、それは私の望むものではない。
けれどひとはそう簡単に変われない。
だから私は、どんな言葉にも動じない強い心が欲しいと切に願う。
遠くの空に一番星をみつけた。
今朝の予感は間違いじゃなかったと、家路を急ぐ。
春はまだ遠く。
その他
公開:24/11/14 12:51

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。

清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選

ときどき短編〜長編も書いています(別名義もあります)

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