プリンセスライン

14
15

結婚式の打ち合わせの後
薄暗いバーに彼と立ち寄った。
壮年のマスターが「いらっしゃいませ」とカウンター席を勧める。
私達の前にカクテルが置かれた。
「まだ頼んでいないのに…サプライズ?」
彼は微笑む。
マスターは徐にトランプを取り出しシャッフルをする。
「抱えているお悩みを考えてカードを一枚選んで下さい」とカードを広げる。
私は少し考えて「ジョーカー」を選んだ。
ジョーカーを戻しシャッフルをして渡す。

マスターが手元にカードを広げて
ゆっくり手をかざすとジョーカーが消えていた。

カクテルを飲むと私達は店を出た。
彼には言わなかったけど地味なマジックだと思った。

だけど帰宅して着替えた時、抱えている悩みを聞いた理由が分かった。

私が子供の頃に負った右腕の火傷跡が綺麗に消えていたから。 


式の当日
念願のプリンセスラインの純白ドレスを着た私は
彼と手を繋いでチャペルへと歩き始めた。
ファンタジー
公開:24/11/16 12:05

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容