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昔よく訪れた公園。季節の花がいつも咲いて、人影がなくひっそりとしている。
いつも見る夢なので、夢の中ということは分かっているけれど、風景も、空気の肌触りも、花の匂いもあの頃と同じ。
「チューリップが咲き始めたね」
「赤い花がきれい」
公園のベンチに座ってとりとめもない話を交わす。私もあの人も、寝たきりになっているので、現実の世界で会うことはできない。
同じ時間に同じ夢を見ている実感がある。
今日もあの公園のベンチに腰を下ろし待っているが、彼女は来ない。私一人、ぼんやりと時を過ごす。
そんな日が何回か続いた。
病床の私のもとに届いた訃報。葬式は家族で済ましたとのこと。彼女が世を去ったのは、やっぱりあの日だった。
もうあの公園の夢は見ないだろう。
いつも見る夢なので、夢の中ということは分かっているけれど、風景も、空気の肌触りも、花の匂いもあの頃と同じ。
「チューリップが咲き始めたね」
「赤い花がきれい」
公園のベンチに座ってとりとめもない話を交わす。私もあの人も、寝たきりになっているので、現実の世界で会うことはできない。
同じ時間に同じ夢を見ている実感がある。
今日もあの公園のベンチに腰を下ろし待っているが、彼女は来ない。私一人、ぼんやりと時を過ごす。
そんな日が何回か続いた。
病床の私のもとに届いた訃報。葬式は家族で済ましたとのこと。彼女が世を去ったのは、やっぱりあの日だった。
もうあの公園の夢は見ないだろう。
ファンタジー
公開:24/11/16 10:22
老後の楽しみに、短いものを時々書いています。
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