秋の線香花火

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すかっとした秋晴れの休日に少し足を伸ばして
秋を感じに近くの野山へ散策に出かけた
夏の暑さとすっかり入れ替わった秋の空気
野原に広がるススキが陽に照らされ辺りの風景をぼやけさせる
始まった紅葉は急ぎ足で季節を進ませてるかのようだ
秋の風情を感じながら川辺を歩く
夏場は涼を求めてたくさんの人で賑わったであろう
清流をたゆたえた川も今は静かにそのせせらぎを響かせるのみ
ふと目についた柿の木は燃えるような橙だいだいに色づいた実をいくつもつけていた
今にも落ちそうなその橙にわたしはふと夏の光景を感じる
秋の光景の柿の実になぜ夏を感じるのか不思議に思っていたがその疑問はすぐに解けた
それは夏に遊んだ線香花火だった
線香花火の最後の丸い橙と柿の実の橙とがその燃えるような橙ゆえに鮮烈に私の頭の中で重なる
夏の日の思い出が今目の前の秋の風景に重なる
少し足を伸ばした甲斐があったと一人満悦した瞬間だった
その他
公開:24/11/10 21:13

icchi

頭の中に浮かんでは消える意味のない想いのようなものを成仏させてあげたくて書いてます

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