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 娘が死んで、もう使わなくなった愛を、捨てるのも面倒くさいので、ベランダの隅に放置しておいたら、愛から小さな植物の芽が生えてきた。どうせすぐに枯れるだろうと思っていたが、ここのところ適度に快晴の日と雨の日が交互に訪れたので、予想に反して芽はどんどん成長していった。そのうち茎が伸び始め、先端につぼみが現れた。私はネットでこの植物について調べたが、よくわからなかった。ある朝、ベランダを見ると、つぼみが開き、美しい大輪の花が咲いていた。私はしばらく茫然としていた。はっと我に返り、とりあえず鉢に移すか、と思った時、花の根にびっしり覆われた愛が、カラカラに干からびていることに気づいた。
ファンタジー
公開:24/11/11 23:34

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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