手紙

私の母は私が幼い頃に亡くなった。
幼い私は母の死に泣いて、泣き疲れて寝て、起きるとまた泣いていた。
そんな私を見て、父は「母さんに手紙を書いてみてはどうだろう？」と言った。
お正月。空高く上がる凧に私は手紙を貼り付けた。
高く高く凧を上げ、しばらく待つ。凧が降りてくる頃、私の書いた手紙の代わりに母の書いた手紙が凧に貼り付けてあった。
当時の私はそれが母からの手紙だと信じて疑わなかった。
本当は母の親友が父に頼まれ書いていたものだった…
その人が私の新しいお母さんになった時、私は真実を知ってしまった…
お母さんの荷物の中に私の書いた手紙を見つけてしまった。
薄々は気付いていた。そうじゃないかなと思っていた。
だから私は怒らない。お母さんと二人、手紙を仏壇に供えて、手を合わせる。
私は今でも母に手紙を書く。仏壇に置かれた手紙に返事は来ない。
だけど母はきっと天国で読んでくれていると信じている。