120サイズの海

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母から荷物が届いた。
一抱えほどもある発泡スチロールで、ずっしりと重たい。きっと牡蠣だ。蓋を開けるとワンルームいっぱいに潮のにおいが広がった。
発泡スチロールの中身は海だった。
深緑色の海がゆったりとたゆたっている。故郷の海を切り取ったものだとすぐにわかった。冬の太陽を反射して、鈍くきらめいている。
魚影が見えて、思わず声が出た。いてもたってもいられず、百均に行って大急ぎで釣り具を揃えた。
早速、コタツに置いた発泡スチロールに、ロフトから釣り糸を垂らす。アタリはすぐに来た。夢中になって釣り続け、ミニキッチンのシンクが小魚で一杯になった。
気が付くとすっかり夜だった。照明は点いていないが、部屋は仄明るかった。海に月が映り込み、発泡スチロールがランタンの灯のように揺らめいていた。

明日は大学に行ってみるか、と思った。

冬の夜の海の波の音を聞いていると、心が凪ぐのを感じた。
ファンタジー
公開:24/11/04 13:10
更新:24/11/05 12:45

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