沈む寺

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山奥の池の中央に小さな寺がある。不思議だが寺は明るい昼間は見ることができない。

「池の真ん中には本当に寺があるのかな」
「昼間は池の中に沈んでいるらしいぞ。それで闇夜の時だけ水面に出てくるんだって。沈む寺なんだよ。見たことないけど」
「なんだよ、見たことないのかよ。じゃあさ、次の闇夜の時に見に行かないか」

好奇心の塊みたいな男の子たちは、月の光もない夜、ライトを片手に池のほとりまで行ってみた。確かにお寺のような形をしたものが池の真ん中に浮いているように見える。よく見るとそれはウキだった。闇夜の時にやってきた男たちの手によって池の水が少し抜かれ、寺のようなウキが水面に現れたのだ。ボートに乗って近づく男たちが話をしている。

「今回は宝石だったな。暫く寝かせてから換金しよう」
「そうだな。水中なら誰も気づく事はないしな」

男の子たちは一部始終を見ていた。そしてスマホを取り出して通報した。
ミステリー・推理
公開:24/11/03 23:34
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松浦照葉( 福岡県 )

IT業界を卒業し、小説執筆中です。
普段はnoteでショートショートを投稿しながら、AmazonとAppleと楽天で小説、実用書の電子書籍を販売中です。
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