手紙

日本では物にも霊魂が宿ると言われている。付喪神を例に有名な話である。
その物をいかに大切にしていたか。気持ちが込められたものほど霊魂が宿った。
それで言えば手紙なんて江戸時代、最も霊魂が宿りやすかったものの一つだろう。
手紙を書くという行為は、相手を思う行為。その気持ちを筆に乗せ、紙に書き記す。
今も昔も、手紙がどこかに行ってしまったなんて言われるのは、手紙に霊魂が宿っているからかもしれない。
さて、その江戸時代と言えば、まだそれほど国民の識字率も高くない時代。手紙を貰っても読めぬ者がかなりの数いた。
故に手紙を読める者は重宝されたが、中には文字の全ては読めず、適当な事を言って誤魔化す者もいた。
霊魂の宿った手紙はそれが我慢ならず、何度も読み手に注意しようとしたが気付いてもらえなかったそうだ。
その結果、いじけてしまう手紙も多く、文字がミミズののたくった様に見えてしまうものが増えたらしい。