その想い、翼に乗せて

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 老爺は自身の骨董品を友人に披露していた。
 「珍しい水墨画ですな。美しい」
 そこには一羽の白いカラスが描かれていた。
 「平安時代の作品です。この鳥には悲しい逸話がありましてな」 
 「というと?」
 「このカラスは元は人間の青年でした。ある姫に恋をしたが、その想いを伝えることなく、姫は流行りの病でこの世をさった。青年は悲しみ後悔した。そこで、神に願いカラスに変えてもらい気持ちを伝えるため、姫のいるあの世に飛んで行こうとした。しかし、当然見つからず彼は諦めたそうです」 
 「切ない話ですな。その後、その白いカラスは?」
 「さあ、どうなったのでしょうな。」
 老爺は立ち上がり障子を開けた。その先の庭の木に二羽の黒と白のカラスが留まっていた。その二羽が今飛び立った。
 こんな話をしたからか、老爺はあり得ないと思いつつこう思わずにはいられない。あのカラスはただのアルビノかはたまた... 。
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公開:24/10/31 22:38

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