与太郎(落語)

「困ったな」
　与太郎がふらつきながらため息をついている。
「何が困ったんでぇ」
　熊五郎がたずねると与太郎が言葉を返した。
「職が無いんだ」
「大工は辞めたのかい?」
「イヤになった」
「困ったねぇ」
「仕方ないので、古物商で雇ってもらうかな」
「お金の計算できるのかい?」
「裏方で商品の整理をするよ。値段つけとか」
「そうか。頑張れよ!」
「俺、頑張る!」
　人に言われたわけではなく、自分の考えで行動するようになった与太郎は、新しい商売に向かって再出発した。
　良い話に特別なオチは無い。
　おあとがよろしいようで。