手紙

「隆ね、お婆ちゃんの病気が早く治りますようにって毎日手紙書いていたのよ」
娘の言葉に私は首を傾げる。私は入院中、一度も隆から手紙を貰っていない。だからその話を聞かされ、少しショックだった。
「あの子が手紙を書いていた相手は母さんの中にいたウイルスよ。『この病院は凄く良い設備が整っています。早く出ていく事をお勧めします』とか『毎日ご苦労様です。偶には休んで、外に遊びに出かけてはどうですか？』とか、ウイルスに外に出るよう手紙を書いていたの」
そう言えば入院中、看護師が薬を文字がぎっしり書かれたオブラートに包んで渡してくれた。あれって隆が書いていたものだったのね。
嬉しくなっちゃう。悪いウイルスが私の中からいなくなったのは隆のおかげだったのね。
「そういう事。それに隆ったら、母さんの中にいたウイルスとすっかり仲良くなっちゃってね。今日も風邪の噂で、ウイルスがどこで何をしているかを聞いていたわよ」