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寄せては引いて、引いては寄せて…。
繰り返し砂浜で薄くのばされていく波をじっと見つめ、ちょうどよい頃合いを待つ。
深い青色の海も浜辺を走ってくる時にはほとんど透明で、白く美しい網模様には陽光が跳ね、不揃いの泡がぶくぶくと点描されている。

(そろそろかな)

1時間ほど波を吟味して、砂の上を滑り美しくのばされた波へ、貝殻を集めて作った長方形のフレームをあてた。それからギザギザと波のように縁取られた白い波しぶ切手に想いをこめながら浮かべると、ゆらゆらと白い文字が現れて泳ぎ出した。

漢字の「波」に「書」と書いて波書(ハガキ)。
波間を漂う宛名のない透明な手紙へ浮かびあがるのは、誰にも打ち明けたことのない胸の内だ。名前も知らない誰かに届くかもしれないし、永遠に届かないかもしれない。

フレームを外すと、波書を迎えにきたように波が寄せ、引いていく波にのって大海原へと配達されていった。
ファンタジー
公開:24/10/31 00:00
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ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

読んでくれてありがとう!

寒い季節になったから、気が向いた時にふらりと立ち寄ってゆるーく投稿しています。

少し早いですが、よいお年を!

 

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