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街角にあるアンティークショップの前をとおりすぎた時のこと。ふと窓辺に飾られた魚のブローチに目がとまった。
淡い紫色のガラス製で、くすみや気泡は一切みあたらない。太陽の光がさしこむ加減によって、桃色や橙色に見えることもあった。
ひと目で恋におちたぼくは、毎日、決まった時間に訪れるようになった。
そんなある日のことだ。どことなくすねて甘えるような声で、魚が話しかけてきた。
「わたしを自由にしてくれるのはあなた?」
「違うよ!」とぼくは答えた。心のなかを見透かされたようで、恥ずかしくてたまらなかった。
「そう。違うのね。残念だわ」
ぼくはあわてて付け足した。
「きっと近いうちに誰かが見つけてくれるさ」
「そうかしら」
店に入った人間の少女が、窓越しにおこなわれるぼくたちのやり取りをじっと眺めていた。
「店員さん。あの小鳥が見てた魚のブローチをください」
ぼくは泣きながら空高く舞い上がった。
淡い紫色のガラス製で、くすみや気泡は一切みあたらない。太陽の光がさしこむ加減によって、桃色や橙色に見えることもあった。
ひと目で恋におちたぼくは、毎日、決まった時間に訪れるようになった。
そんなある日のことだ。どことなくすねて甘えるような声で、魚が話しかけてきた。
「わたしを自由にしてくれるのはあなた?」
「違うよ!」とぼくは答えた。心のなかを見透かされたようで、恥ずかしくてたまらなかった。
「そう。違うのね。残念だわ」
ぼくはあわてて付け足した。
「きっと近いうちに誰かが見つけてくれるさ」
「そうかしら」
店に入った人間の少女が、窓越しにおこなわれるぼくたちのやり取りをじっと眺めていた。
「店員さん。あの小鳥が見てた魚のブローチをください」
ぼくは泣きながら空高く舞い上がった。
ファンタジー
公開:24/05/13 09:00
☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。
清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選
ときどき短編〜長編も書いています(別名義もあります)
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