ダブルモーニング

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会社の近くにある喫茶店でモーニングをいただくのが日課になっている。その店でダブルモーニングなるサービスを始めたと勧められたので、注文することにした。
待つこと五分。店員がスーツの紳士を連れてやってきた。
「お待たせいたしました。ダブルモーニングです」
「えっ……、社長!?」
思わず素っ頓狂な声を上げた俺の向かい側に腰をおろす社長。店員は当たり障りない笑顔でふたり分の珈琲と小倉トーストをテーブルに並べて去ってゆく。
社長はおもむろに切りだした。
「最近なにか困ったことはありませんか?」
小さな事務所だ。実は上司のパワハラで悩んでいるとは言えなかった。
「いいえ。特には」
「そうですか。ところで近いうちに支店をだします。異動の希望はありますか?」
こんなチャンスはめったにない。とっさに飛びついた俺だったが、ダブルモーニングの仕掛け人が社長だったと気づくのは、後輩ができた後のことだ。
その他
公開:24/05/12 09:00

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。

清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選

ときどき短編〜長編も書いています(別名義もあります)

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