令和の彫師

人と人との繋がりが希薄になりつつある昨今、彫師である俺は心に言葉を彫る技術を身につけた。
初心忘るべからず。心に刻むべき言葉を、俺は心に彫る事が出来る。心に刻まれた言葉は一生忘れない。
その話を聞いて、よく付き合いたてのカップルがやってくる。
いつか結婚するから。私達は運命の人だから。そんな安い言葉で、お互いの心に文字を刻もうとする。
俺はやめた方が良いと助言する。人との関係に別れはつきもの。別れ話になった時、必ず後悔する。
だが、俺の説明に相手は激怒する。
私達の愛を疑うのか？金払っているんだからいう通りにしろ！
…そうかよ。それじゃ彫らせてもらう。
そうして彫った言葉がすぐに心の中、一生消えない傷となる。言わんこっちゃない。
心に彫った言葉は消せない。無理に消そうとすれば傷は大きくなり、それはトラウマになる。
…これは実体験だ。
心に最愛の人の名を彫り、失恋し、恋愛が怖くなった俺のな…