空っぽ自販機

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4丁目の角の文房具屋の前に自動販売機がある。
その自動販売機には、見本の商品がない。
缶ジュースの見本はおろか、写真すらもない。
ただ、「136円」とだけ書いてある。
ある日、若い夫婦がその前を通りかかり、こっそり136円を入れた。ガチャンと音がして、何かが出てきた様子だった。そして夫婦は出てきたものを大事そうに抱えて自販機の前を離れて行った。
またある日、受験生らしい高校生がやってきて、お金を入れ始めた。驚いたことに、まだ133円しか入ってないのに、ガチャンと音がした。自販機から出てきたらしい、何やら青い半被のようなものを羽織ってその場を立ち去った。
そして、ある日、私は136円を握りしめ、
ついに自販機の前に立った。
130、133、135、136…全てのコインを入れ終えると、ガチャンと音がした。
そして出てきたのは、父、イサムだった。
ミステリー・推理
公開:24/05/12 23:12
更新:24/05/12 23:25

pique

田丸先生の講座を受けて書き始めました。
講座で出会った田丸先生のプロフと作品に萌えました。
元々、編集後記が好きだったので、400wの魅力に取り憑かれてます。

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