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幼なじみの藍子から、引っ越しを知らせるポストカードが届いた。
色鉛筆で描かれた海と砂浜。巻き貝型をしたアパートの一室に住んでいて、楽しく暮らしていると書き添えられていた。
夜眠る前に電話をかけると、ワンコールで藍子が応答した。長い付き合いなので、すぐ異変に気づいた。
「なにかあったの?」
「うん。実はね、私、もうそちらに帰れないの。イラストを見て」
言われたとおりにじっと眺めてみたら、砂浜でもぞもぞしている巻き貝を見つけた。姿は違うけど、藍子だった。
「どうしてこんなことに?」
藍子は静かに頭を横にふり、涙を浮かべた。
「お母さんに、私のことは忘れて幸せに暮らしてって伝えてくれる?」
事情は言えないということなのかもしれない。とにかくいまは、藍子の願いを叶えようと思った。
「わかった。きちんと伝えるよ」
「ありがとう」
藍子は安堵したようなため息を落とすと、砂の一部になって消えてしまった。
色鉛筆で描かれた海と砂浜。巻き貝型をしたアパートの一室に住んでいて、楽しく暮らしていると書き添えられていた。
夜眠る前に電話をかけると、ワンコールで藍子が応答した。長い付き合いなので、すぐ異変に気づいた。
「なにかあったの?」
「うん。実はね、私、もうそちらに帰れないの。イラストを見て」
言われたとおりにじっと眺めてみたら、砂浜でもぞもぞしている巻き貝を見つけた。姿は違うけど、藍子だった。
「どうしてこんなことに?」
藍子は静かに頭を横にふり、涙を浮かべた。
「お母さんに、私のことは忘れて幸せに暮らしてって伝えてくれる?」
事情は言えないということなのかもしれない。とにかくいまは、藍子の願いを叶えようと思った。
「わかった。きちんと伝えるよ」
「ありがとう」
藍子は安堵したようなため息を落とすと、砂の一部になって消えてしまった。
ファンタジー
公開:24/05/16 09:00
更新:24/05/13 09:16
更新:24/05/13 09:16
☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。
清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選
ときどき短編〜長編も書いています(別名義もあります)
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