鳥類図鑑

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緑濃い森。林道をたどると循環器科医院に着いた。扉を押すと誰もいない。小さな受付窓口から一枚の用紙が出て「キニュー」と声がする。用紙に病状を記入し窓口に入れる。さっと用紙が引き入れられると受付室の内側でかたかたと音がする。カウンターにぶ厚い鳥類図鑑が一冊ある。診察室の扉が開いて入ると医師が笑顔で迎えてくれた。壁に鳥類の骨格や羽の図板が大きく掲げてある。病状を話すと医師は容態には触れず森の様子を語った。新緑のとてもいい季節だという。「薬を出しましょう」と医師は処方箋をさらさらと書いて奥に渡す。しばらくすると薬袋をくわえて鳥が出てきた。ルリビタキみたいな青い羽だがカラスほどに大きい。医師は薬袋を受け取り中身を確認してこちらに渡す。「一週間服用してください」「鳥は?」「受付とか調剤をやらせています。研修中ですが、人間の見習いくらいには役立ちます」と鳥の頭を軽く撫で「まだ青いクチバシです」と笑った。
その他
公開:24/05/08 15:20

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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