生きているアバター

22世紀の近未来。VR（バーチャル・リアリティ）の技術はさらに進化していた。
しかしまだ、アバターを“実体化”する技術は、生み出されていなかった。
VR愛好家のケイ君は、自分のアバターを“現実”の存在とすべく、“恐怖の科学者”のハイド氏を訪ねた。

ハイド氏は言った。
「アバターの人格を、実際の人間に植え付ける事は、できなくはない」
「本当ですか」
「しかし多額の料金が掛かる」

ケイ君は、泣く泣く依頼をあきらめたが、それは正しかったようだ。

当時、世の中で奇妙な事件が起きていた。死体の盗難である。
それも、健康な肉体のまま“脳死”した死体が、研究所や葬儀場から紛失するのだ。

恐怖の科学者（マッド・サイエンティスト）のハイド氏は、VRのアバターの人格と情報を、小さなメカニズムに詰め込み、それを・・「健康な肉体の死体」の頭部に挿入する。

そんな噂話が、医学界や科学界で囁かれていたのだ。