36歳

荷物が届いた。係員が大きなケースを部屋に運び「ここでいいですか」と居間を確かめる。簡易ベッドが展げられ、寝るように言われる。「服は着たままで？」「はい、こっちも着ています」
横になると配線が何本も出たヘッドバンドが嵌められる。「失礼」と私の胸に吸盤をつける。そこからも配線。「ケーブルデータ転送をします」と係員は荷物をソファに置きケーブルを繋ぐ。目を瞑ると深い眠りに落ちる。
気がつくと私はソファに座っていた。簡易ベッドに寝ているのは私に似たマネキン。さっきまで私はこのマネキンだった。私そっくりのマネキンを係員は持ち帰った。
誰もが好きな年齢でそっくりAIロボットを作る。私は36歳を選んだ。肉体も精神も最も充実してると感じたから。一生に一度だけ作るそっくりAIは数年ごとに更新する。すっかり定着したシステムだ。人間の私はどこ？考えるのはやめよう。このそっくりAI、これが私だ。永遠に36歳の私だ。