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世間が連休だからといって僕は休みになるわけじゃなく、季節特有の家業に駆りだされるのだからゆううつなことこのうえない。高速道のサービスエリアにある従業員用出入口からそっとなかに入り、定位置であるベンチに腰かけた。
お父さんの手元には代々つたわる秘伝の瓶。見た目はなんてことないラムネ瓶だけど、国宝レベルの品物らしい。ビー玉部分をグッとなかに押し込み、仕込んだ炭酸が騒ぎたて、やがて静まるまで待つのが我が家の仕事だ。そうやって夏の予感を世の中に振りまくのだ。
周りはレジャーに向かう家族連ればかりだった。僕はお父さんに不満をぶつけた。
「ねぇ、僕がここに連れてこられる意味ってなに?」
「今日のような日が、いつか特別な日に変わるからだよ」
「大人になれば意味がわかる?」
「素直な気持ちを忘れなければな」
お父さんはなぜかうれしそうに青空を見上げている。僕は頬をふくらませながらあさっての方向を見ていた。
ファンタジー
公開:24/05/05 17:30
更新:24/05/05 19:24
立夏

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。

清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選

ときどき短編〜長編も書いています(別名義もあります)

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