行きっ放し

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東京、黄色とオレンジ色の電車が走る界隈。
最初はのんびり。お茶も飲めそう。だがやがて味わう未曽有の恐怖。くせになる。

その巨大さをアピールするもの。息もつかせぬアクロバティックをアピールするもの。
でも前述の東京での恐怖を味わうお客さんたちの喜びは半径1キロに及ぶかも。会社の同僚に話したら、
「うわっ、近所の住民には、はた迷惑だな」

どんなに凄まじくても、どんなに恐怖の対象でも、それらの共通点はスタートとゴールが同じ。
 
彼は言う。
「俺は、これでも恐怖とスリルを客に与えた。一旦乗場からガタゴトと観覧車の頭上あたりまで登り、そこから戻るように急坂急降下、コブ3つ超えて、プールまで客を運んだ。つまり、行きっ放し、往復する形態だ。移動手段として利用されるなんて。超レアだろ? 本当にこの世に存在したのだ」

ネットで検索かけても、なかなか引っかからないが確かに彼は存在した。千葉県に。
ミステリー・推理
公開:24/05/05 12:46

紫空勝男( 埼玉県 )

2024年5月からお世話になります。
趣味は文章を書くこと。
ショートショートは読むのも書くのも好きです。

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