日本人形

0
2

 昨年末に宿泊した旅館に、小さな日本人形が飾られていた。
 おかっぱ頭の愛くるしい人形で、思わず頬が綻んでしまった。
 従業員に聞くと、売り物ではないとのことだった。買えないのが少しだけ残念だった。
 旅を終え、家に戻ってから、旅行鞄の中に例の日本人形が入っていることに気がついた。
 ビックリして旅館に電話をすると、すぐに旅館の主人だという男性と繋いでくれた。
 その声は妙に若く、高校生と言われても信じてしまいそうだった。
 あの方がそちらに行きたいという意志を見せたのであれば、仕方がありません。お譲りいたします。お金もいりませんので。
 電話は一方的に切られてしまった。その後は、何度かけても繋がらなかった。
 現在、日本人形は私の部屋に飾られている。
 気のせいか、日本人形が来てから、自分の声が妙に若々しくなったような気がする。
ホラー
公開:24/05/02 07:59
400字小説

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容