老人と種子の家

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男は愛する妻と結婚した。結婚後、一軒家で仲良く暮らしていたが、妻は不慮の事故で亡くなった。男は自暴自棄になり、酒に溺れ仕事も家も失った。
悲しみに暮れていると、種を売る青年がやってきた。毎日種に水をやれば、家が育ち妻に会えるのだという。男は妻を想いながら毎日水をやった。雨の日も風の日も。やがて家が育ちはじめ、立派な一軒家が建った。しかし妻には会えなかった。男は大きな家に一人で住み、静かに暮らした。生活に不自由はなかったが、心は満たされなかった。
そんなある日、台風で家が流されてしまった。そして種だけが残った。男はまた種子に水をやり、家を育て始めた。月日が流れ、男はすっかり年老いた。毎日水をやるのも難しくなったが、何とか小さな家が建った。そこへ若い女性がやってきた。男は驚いた。間違いなくあの頃の妻だった。小さな家は二人で暮らすには十分だった。男は愛する妻のために長生きしようと心に誓った。
ファンタジー
公開:24/05/01 22:05
更新:24/05/01 23:55

ならのゆか

奈良県出身、神奈川県在住の放送作家です。趣味で投稿始めました。ブラックユーモアが好きです。宜しくお願いします。

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