サクラノキモチ

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「やだー、この小さな毛虫、気持ち悪い」
「この木の枝から、ぶらさがってるよ」
「こんな木、切っちゃえばいいのにね」

ちょっと、おまえらひどくない?
こないだまで、俺を見上げてうっとりしてたのは誰だよ。
「日本人に生まれてよかったね」とまで言っていたじゃないか。
そりゃ、俺も少しは変わったさ。でも桜色の花びらが緑の葉っぱに変わっただけ。中身はまったく変わってないんだぜ。
人間には『人は見た目が九割』って言葉があるみたいだけど、それにしてもあんまりだよな。ていうか、俺、人間じゃないし。
暑い夏、寒い冬を越すのって樹木にとってすごい大変なことなんだぜ。
そんなんじゃ、来年は咲いてやらないからな。

・・・でもなあ、咲いたときのあの歓声。うっとりとした眼差し。幸せそうな笑顔。
あれを経験したら、また咲きたくなるんだよなあ。

仕方ない、あの歓声を思い出しながらもう一年がんばるか!
ファンタジー
公開:24/05/01 18:00
更新:24/05/01 17:51

もりを

400文字という制限のなかで、あれこれと言葉を考えるのが楽しいです。最近では、54字の物語を書くことにもハマっています。

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