ティーパーティのお客様

0
2

辺りはいっせいに緑を深め、初夏の装いを始めている。この季節の楽しみのひとつは、ちいさなティーパーティをひらくこと。私は倉庫から鉄製のテーブルをだしてきて庭の真ん中においた。レモン色のパラソルをさしたら開店準備終了。あとはお客様がやってくるのを待つだけ。
積みためていた本の山から、フィーリングで選んだ本を抱えて外へでる。そのあいだにさっそく最初のお客様が訪れていた。
「こんにちは。お茶はいかがですか?」
「今日は遠慮しておくわ。ところで今度、髪結いを始めるの。最初のお客様になってくださる?」
「あら、素敵ですね。ではお願いします」
本をテーブルのうえに並べて椅子に腰かける。すると彼女は私の髪をきれいに編み込み、色とりどりの花をあしらった。
「魔法をかけておいたわ。だからもう泣かないでね」
美しい羽を広げて飛びたつ彼女を見送りながら、失った恋の傷を過去のものとして受け入れることにした。
恋愛
公開:24/05/03 10:18
更新:24/05/03 11:12

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。

清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選

ときどき短編〜長編も書いています(別名義もあります)

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容