名画でショート11『イワン雷帝とその息子』(イリヤ・レーピン)

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雷帝は恐怖の象徴だった。
暴君、峻厳、冷酷、その他ありとあらゆる形容詞が彼につけられた。彼の征服欲は留まることを知らず、虐殺はやまず、ありとあらゆる欲望を満足させることに全力を尽くした。
彼の最大の功績は、王笏で皇太子を殴り殺したことだった。
きっかけは些細なことだった。
だが、雷帝は自らの権力を絶対だと信じており、実際にその通りであり、雷帝は家長権に基づいて皇太子を撲殺した。
雷帝といえども、息子を殺害した罪におののき、その後は生ける屍となった。意欲も気力も失い、征服欲も虐殺も止んだ。
彼の王国は、実質的に一代で滅んだ。
彼の王国の国民と周辺国にとって、それは、とても幸せなことであったのだろう。
皇太子は自らの死をもって、多くの人々を救ったのだ、ともいえなくもない。
それが、とてつもない不幸な偶然だったとしても。
その他
公開:24/05/03 05:34

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