ブラス
0
1
ハノイの廃品工場に捨てられている部品の山には、私の大好きだったぬいぐるみの残骸が残されている。そいつの名をブラスと言った。私がまだ幼かった頃に、父が誕生日プレゼントで買ってくれたものだ。
両親は共働きで、一人で家にいる時間が長かった。夜遅くになっても親が仕事で帰らないときは、ブラスはいつも私の傍にいてくれた。ずっと枕の隣で寝るまで見守ってくれる、自分だけの第二の親みたいなものだった。
中学生になって、クラスの女の子に恋をした。彼女は華奢で私より背が高く、おっとりした目つきで私のほうに時々視線を合わせる。次第に、大半の時間を彼女に費やし始めた。
そして段々とブラスに触れる時間は短くなり、棚の端へと、押入の奥へと追いやられていった。
ある日、押入からカタッという物音がした。開いてみると、奥底でブラスが横に倒れ、ほぼ部品だけに変わり果てていた。それでも、その目はずっと私を見つめていた。
両親は共働きで、一人で家にいる時間が長かった。夜遅くになっても親が仕事で帰らないときは、ブラスはいつも私の傍にいてくれた。ずっと枕の隣で寝るまで見守ってくれる、自分だけの第二の親みたいなものだった。
中学生になって、クラスの女の子に恋をした。彼女は華奢で私より背が高く、おっとりした目つきで私のほうに時々視線を合わせる。次第に、大半の時間を彼女に費やし始めた。
そして段々とブラスに触れる時間は短くなり、棚の端へと、押入の奥へと追いやられていった。
ある日、押入からカタッという物音がした。開いてみると、奥底でブラスが横に倒れ、ほぼ部品だけに変わり果てていた。それでも、その目はずっと私を見つめていた。
恋愛
公開:24/05/03 04:41
更新:24/05/03 04:54
更新:24/05/03 04:54
2023/10/19に参戦した新参者です。忌憚のないコメントお待ちしております。
コメントはありません
ログインするとコメントを投稿できます