2
3
ポケットのなかに住んでいる魚を観察することが私の日課だった。
彼を見つけたのは、失恋して空っぽになった状態で毎晩飲み歩いていたある真夜中のこと。ふと見上げた月の光が私のポケットをさしているので、なにげなく覗いたら彼がいたのだ。
魚には『シーノム』という名前を付けたのだけれど、不思議なことに洋服を変えても彼は当然のようにすいすいとどこからともなく姿を現す。
ちなみにシーノムは米粒よりもずっと小さく、虹色に輝く角と藍色のウロコを持っている。彼が泳いでいる海は私には観測できない空の色を映しているらしく、毎日表情が違う。だから飽きなかった。
そして数年が経ち、心のキズが癒えた頃。真夜中に突然、別れたひとから復縁を迫る連絡が届いた。私の気持ちは決まっていた。
「シーノム、私もそちらに連れていって」
片想いだと思って諦めていたのに、夢が叶った。いまはポケットの海のなかで、ふたり幸せに暮らしている。
彼を見つけたのは、失恋して空っぽになった状態で毎晩飲み歩いていたある真夜中のこと。ふと見上げた月の光が私のポケットをさしているので、なにげなく覗いたら彼がいたのだ。
魚には『シーノム』という名前を付けたのだけれど、不思議なことに洋服を変えても彼は当然のようにすいすいとどこからともなく姿を現す。
ちなみにシーノムは米粒よりもずっと小さく、虹色に輝く角と藍色のウロコを持っている。彼が泳いでいる海は私には観測できない空の色を映しているらしく、毎日表情が違う。だから飽きなかった。
そして数年が経ち、心のキズが癒えた頃。真夜中に突然、別れたひとから復縁を迫る連絡が届いた。私の気持ちは決まっていた。
「シーノム、私もそちらに連れていって」
片想いだと思って諦めていたのに、夢が叶った。いまはポケットの海のなかで、ふたり幸せに暮らしている。
恋愛
公開:24/04/28 15:23
☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。
清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選
ときどき短編〜長編も書いています(別名義もあります)
ログインするとコメントを投稿できます