死臭花

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 屍衣に包まれた娘の身体から、薄紫色の花が咲き乱れている。
 屍守が何度も花を引きちぎるのだが、目を離すとまたすぐに、この名も知らぬ花は娘の身体に咲き誇るのであった。
 弔いのためにやってきた巫女は、花を手折り、匂いを嗅いだ。
「死臭だ。死の営みを止める、不吉な花だ」
 巫女はそう言い捨てると、祈祷を止め、その代わりに清め水を娘の身体にふりかけた。
 途端に、娘の身体は腐り爛れ、瞬く間に白く麗しい骨ばかりとなってしまった。
 屍守はその一部始終を見ていた。言葉を発することはできなかった。
 生前の娘は、歌姫であった。数々の劇場を渡り歩き、歌の力で人々を魅了した。
 その最後の姿がこれかと思うと、屍守は暗澹たる気分にならざるをえなかった。
「人だもの、最期は皆、こうなるのさ」
 巫女の声が、屍守の耳を虚ろに打った。
ファンタジー
公開:24/04/28 10:44
本格ファンタジー 幻想小説

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