新幹線物語

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大阪出張した。品川から新幹線D席。E席の中年の男は座席のテーブルで背をかがめて原稿用紙に書いている。新横浜停車。目が合って男が口を開く。「大阪までに完成しないと」「PCじゃなく」「手書きが癖です」「何を?」「ドラマの脚本。放送作家で、実は予定のホンがドタキャン、急遽ホンの差し替え。大阪で午後一番に撮影。それまでには」男は一気に喋るとまた原稿用紙に向かった。車窓に富士山。次々と書く書き損じの紙がばさっと床に落ちた。「すみません」「拝見してもいいですか」「どうぞ」
ドラマの脚本は初めて。書き損じでも登場人物やシーンが想像できる。名古屋通過。かなりのボツ原稿。京都を出た。シャッフルした原稿の束を作家に渡す。「面白い」作家はランダムな原稿を最初から読み返す。「このホンで決まり」新大阪到着。ホームで私に「あの順序は偶然で著作権はないね」と念を押す。「気にしないで」「来週のドラマ見てね」作家と別れた。
その他
公開:24/04/27 14:58

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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