なにのぞむなくねがふなく

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林の中を歩いている。どこへ行き着くかも分からないが、ただぼんやりと、独りで歩いている。

雪が降っている。強風が吹き荒れて、視界が霞むほどに舞い上がった雪が降っている。その中を、足を取られそうになりながらも一歩ずつ歩いていく。

ふと足元を見遣ると、狐の皮で出来た上等な皮衣が落ちていた。拾おうと屈んだ。が、その拍子に転んで一尺ほど離れてしまった。取ろうと雪のついた手を伸ばすも、この寒さで腕がかじかんで上手く取れそうにない。それだけではない、よく見ると皮衣も雪と寒さで汚れ、縮んでいるのだ。

私は手を伸ばすことを辞めた。もう、どうでもいいと思った。

風が強くなった。吹雪は更に強くなって、皮衣は見えなくなった。もうすぐ日が暮れる。私は黙って、ただ静かにその様子を見つめていた。
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公開:24/04/29 00:55
その他 中原中也 汚れつちまつた悲しみに フィーリングで読む

ちむ( 愛媛県 )

文を書くことにハマり、最近活動を始めたひよっこ高校生です。お手柔らかにお願いします。

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