雨の国

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谷あいの小さなその村は雨の国と呼ばれる。とにかくよく降る。一年の99%は雨。周りは降らなくてもその村だけしとしと降り続く。水草しかなくて農業は無理。観光誘致もぱっとしない。ダムを作ると検討したが水量が不足。村人が辿りついた策は映画のロケ地。映画にはよく雨のシーンがあるがスタジオでは大量の水を使い仕掛けも大変。この村ではいつも雨。村に時代物、現代物などの街のセットを作った。ロケ隊は雨の中で撮影し、ドーム内の同じセットで晴れのシーンを撮る。滞在費も安いとあって世界中の映画会社が雨の国にやってきた。村はその収益で成り立った。
ところが気候変動。最近は雨が雪に変わった。雪ばかり降る。ロケ隊は激減。村人は知恵を絞った。世界中から有名無名の脚本家を呼び寄せて高給でシナリオを書いてもらう。雪のシーンが多いシナリオを。彼らの脚本が映画化されるころ、雪のシーンを撮るロケ隊で賑わった。今では村は雪の国である。
その他
公開:24/04/25 10:06

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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