賽の河原の遊園地

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「この河を渡ると生まれ変われます。どこの誰になるかは分かりませんが」
死んでしまった僕に、鬼は目の前の大きな河を指差した。
「心の準備ができるまでは、こちらでお楽しみ下さい」
河の岸辺には、遊園地が彼方まで広がっていた。

「なんでこんなところに遊園地が?」
「人生の最期を楽しく過ごすための、お釈迦様の粋な計らいです」
なるほど。僕は頷いた。
「それにしても広いですね。世界中から死んだ人が集まるからですか?」
「それもありますが、みんな出て行かないのですよ」
「出て行かない?」
「知ってます?今の世界の貧困率とか、平和で自由な暮らしをしてる人数とか」
鬼はこっそり僕に教えてくれた。
なんとなく知ってはいたが、なるほど、生まれ変わっても、幸せに暮らせる確率がちょっと低すぎる。
「僕ももう少し世界が良くなるまで、遊園地で遊んでます」
生まれ変わるのはかなり先になりそうだ。
ファンタジー
公開:24/04/21 23:09
更新:24/04/21 23:42

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