母の願い

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「ねぇ、さくら?」

「なに、お母さん?」

「今日は野菜の特売日よね?」

「おかあさーん…どうして遊園地まで来て日常を思い出させようとするの?」

「あらごめんなさい…でも」


母は確信していた。今日を逃したら、大根を50円で買える日はそうないことを…


「さくら、ちょっと待ってなさい。まだしばらくは並ぶでしょ?」

「嘘でしょ!?今から買いに行くの?」

「待ってて」


ジェットコースターの列から外れた母は、自身のパンプスに隠していた赤いボタンを手にし、それを勢いよく地面にめり込ませた。

その瞬間、園内の地面がけたたましく割れだし、細くまっすぐ伸びる、遊園地からスーパーへの大きな地下道が造られた。


「これで間に合うわ、ありがとうお父さん」


天国の夫から譲り受けたその赤いボタンは、いざというときに使えるよう隠していたものだ。


「お母さん、アトラクション中止だって…」
ホラー
公開:24/04/21 21:51
更新:24/04/21 23:43

かずま( 関東地域 )

2023/10/19に参戦した新参者です。忌憚のないコメントお待ちしております。

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